極地研探検2017 ツアー The・年代測定
今回の岩石試料は、第58次南極地域観測隊の地質隊(2016年11月出発~2017年3月帰国)が、
東南極 エンダービーランド ナピア岩体のリード山から採取して来たものです。
これは、今まで誰も年代測定をしたことのない、未知の岩石です!
ナピア岩体は,太古代(地質時代における40億年前から
25億年前までの期間)の地質体で、『超高温変成作用』※1
の痕跡を残しており、地球の大陸地殻進化の歴史やメカニズムを
考える上で非常に重要な場所です。
また、南極大陸で最も古い年代を示す鉱物も、
ナピア岩体から見つかっています。
今回年代測定を行う岩石は、トーナル岩という花こう岩の一種です。
トーナル岩は、地球で最初にできた大陸地殻をつくっていた岩石
(『TTG』※2)の一種とも言われています。
もしかすると、このリード山のトーナル岩も地球で最初にできた大陸のかけらかもしれません。
年代測定する岩石試料の薄片を観察して、分析する鉱物を探してみましょう。
岩石の年代測定をするためには、薄片で見つけた鉱物(ジルコン)を、
岩石の中から取り出し、分析をできるように加工しなければなりません。
ふだん研究者が実際におこなっている鉱物分離と試料作製の手順をご紹介します。
★当日は顕微鏡で岩石や鉱物の観察も出来ます!
高精度で信頼性の高い、微小領域分析を可能とする
SHRIMPことSensitive high-resolution ion microprobe。
いつもは年代測定から微量な元素・同位体の分析まで、
色々な分析でいそがしく、なかなか分析時間のとれないSHRIMPですが、
今回のツアーでは特別に、参加者の皆さんに自分で測定するジルコンを決めて
年代測定をしてもらいます。(1組4点程度)
南極で最も古い鉱物が発見されるかも!!
※1『超高温変成作用』:一度形成した岩石が,最初と異なる環境(地下深部への沈み込みなどで高い温度・圧力)におかれたり、
流体の影響を受けたりすることによって化学反応を起こし、最初とは異なる鉱物や化学組成をもった岩石に変化する作用のことを「変成作用」と呼ぶ。
そのうち、高温の環境(例えば500℃以上)におかれて岩石が変化する作用を「高温変成作用」、中でも900℃以上の高温環境で起こる変成作用を特に「超高温変成作用」と呼ぶ。
この超高温変成作用を受けた岩石は高温変成岩の中でも珍しい鉱物組み合わせをもつこともあり、
東南極ナピア岩体をはじめとした地域で以前から研究が盛んに行われてきたが、超高温変成作用を受けた地域自体が限られていることもあり、いまだに謎が多い現象である。
※2『TTG』:トーナル岩(tonalite)・トロニエム岩(trondhjemite)・花こう閃緑岩(granodiorite)の頭文字をとった略称。
地球初期(太古代など)の地質体は主にこの3種の岩石から構成されており、地球初期の大陸地殻を構成していたと考えられている。
これら3種の岩石は広い意味での花こう岩のグループに含まれるが、珪長質な花こう岩と中性の閃緑岩のとの間の,中間的な岩石である。